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COMITIA108連続感想-CLR/day「白紙」

COMITIA108 新刊「白紙」表紙 by 三山タロウ on pixiv

春休みを迎えた高校生2年生のかずみ。
来年はいよいよ卒業という季節だけれども、特に将来に何の展望もない日々。
進路なんてよう分からんし、やりたいこととできることなんて一致しない。
明確な将来の夢に向けて奮闘する友人や、2人暮らしの父との日常の中で、ボンヤリとなんとなく過ごす毎日は、ある日出会った「ゆうれい」の少女によって一転する。

いつのまにかかずみの身体を乗っ取った「ゆうれい」。
意識を取り戻すも、驚くかずみに言い放つ。

「かずみちゃんさー やりたいことなんてないんでしょ」
「だったらさ、」

「その体、わたしにちょうだい?」


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COMITIA108のCLR/dayの新刊「白紙」のレビューです。

やりたいことなど思いつかないかずみと、もう一度身体を得て新たな人生を謳歌したい「ゆうれい」。対照的な2人のやりとりを、コミカルかつ、どこかクールに描いた作品です。

高校2年生であるかずみの日常は確かにボンヤリとしたものですが、誰しもが多かれ少なかれ感じる「普通」なもの。
やりたいことはあるけれども、何が出来るのかもよく分からない。
とりあえず勉強はしているけれど、大学に行って何がしたいとかよく分からない。
そもそも卒業した時に進路は決まっているのか。何もかもよく分からない。
そんな日常。

かずみの両親は離婚しているものの、そこには特別に暗い感じはなく、極めてあっけらかんとしたもの。別居している母親に会いに行ったり、父親にブツクサいいながらご飯を作ったり。
そこにあるのは、極めて静かで穏やかな姿です。

一方、「身体が欲しい」と言いながらかずみに迫る「ゆうれい」は対照的に極めてアクティブ。かずみ以外には見えない存在であることをいいことに、家でも街中でも常に自由にフラフラ。
どうにかこうにか「ゆうれい」の存在を遠ざけようとするかずみに対しても、まったく動じずに相対する態度がイイ感じ。

では、果たして身体を奪った「ゆうれい」が何をしたいのか、というのは実は極めて不透明。「やりたいことがたくさんあった」「アイドルになりたい」と言いつつも、そこにあるのは、「ゆうれい」の行動と似たような(悪くいえば)フラフラした自由な感じ。「将来」に対するテンションには明確な違いがあるけれども、実際の姿についてはもやっとした2人です。

そんな日々の中、かずみは母親の再婚の披露宴に出席することに。
そこで直面する「幸せ」の意味。かずみは、そして「ゆうれい」の選択は…。


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たまたま過去作を読んで以来、毎回のCOMITIAでとても楽しみにしているサークルさんなのですが、個人的にとても引き込まれるのはその描写の「静かさ」にあります。

例えば、いつも通りの表情の奥にある迷いの表情。
今までよりも少しだけ、色んなことを考えた時の思いや決意。
何かを経験して、ちょっぴり成長した時の姿。

そうした女の子たちを、情感たっぷり…というよりは、少しだけ距離を置いて見つめているような描写。
そこから見える、彼女たちの静かな前向きさが、ちょっと他にはない魅力です。

また、自分がどうなるかという目線のみならず、その周囲はどう変化し、動いていくのかという、一歩引いた視点が平行して描かれているところも素敵。
世界はドンドン変わるけれども、自分もまた、少しずつ変わる。かもしれない。
そんな世界観がとても素敵な作品です。

COMIC ZINにて通販も行われているので、みんなも読もう。