犬の帰宅

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「宇宙怪人みずきちゃん1巻」感想~レッツゴー怪獣進撃の巻~

少年・水乃まるが住むボロアパートの上の階。そこにはみずきちゃんが住んでいる。
アリを見るような目で蔑み、いつも邪険に蹴り飛ばし、平気な顔して蝉を食べるみずきちゃん。
どう見ても明らかな「変なこ」でも、まるは常にみずきちゃんが大好き。
いつも傍をついてまわるまるは、いつも1人で奇妙な行動を取るみずきちゃんが気になって仕方がない。

やがてみずきちゃんは言った。
「ここからなら この町を遠くまで見渡せるでしょ?」
「この異常に整頓された町を どうやって壊したら楽しいかなって」

ボロアパートの403号室。
転がるUFO。
水槽から取り出した怪生物。

そう、みずきちゃんは宇宙人。
水槽の生物を巨大化させ、この町の破壊を目論むみずきちゃん。
まるはなんだか怖くなったけど、前よりも仲良くなれました。

町の破壊に熱を上げるみずきちゃんは、果たして想いを成し遂げることができるのか。


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たばよう先生の新刊、「宇宙怪人みずきちゃん」を読みました。
秋田書店のWebマガジンChampion タップ!にて連載されている作品です。
リンク先で全話読めるぞ。

妙にレトロでシンプルな描線で描かれたキャラクターたちとは対称に、グロテスクというかエグ目な描写もちょいちょい挟み込まれる作品。血が吹き出たり死体が飛び出るというよりは、土砂降りの雨の中、グチャグチャになった草むらを覗いた時のような感覚とでも言いますか。全体的に湿度というか不快指数が高めで、ヌメっとした描写が多いのが特徴です。

例えば、リンク先のイラストにあるモスグリーン地にピンクの斑点がついた謎の生物「水棲怪獣ポコドン」。
ナメクジのようなウミウシのようなこの生物を巨大化させることがストーリーの1つであるのですが、こいつがまーとってもヌメヌメと描かれているのですね。
水槽の中でどんどん増やされ、雨漏りに濡れてさらに増やされ、増えすぎたあまりみずきちゃんに駆除され、さらに巨大化して…。
見た目はギリギリキュートな見た目ですが、そいつが大量に描写されたら?そいつが巨大化して人を丸呑みしたら?と考えると、結構キツいもの。

キツい感じになりがちな描写が結構多めなのですが、キャラクターの可愛さや妙にぶっとい描線も相まって、ギリギリの所でキュートさを保ってます(感想には個人差があります)。
その危ういバランスは、「絶対気持ち悪いのがいるよな…」と思いながら、湿った場所にある大きな石を覗いてみる感覚を思い起こすというか、怖いもの見たさでドキドキしたらやっぱりちょっと怖かった!という感覚を思い起こさせてくれます。

ヌメヌメしているのはポコドンだけではなく、大雨、カエル、タコ、海、鼻水、精液、尿、etc...と、全体的に液体成分&不快指数が高めな描写が多めです。
今の梅雨の時期には持ってこいの作品ですね!

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もう1つこの作品の大きな魅力(?)となっているのは、主要となる目立つキャラクターがジメジメ感を吹き飛ばす程ハイテンション&倫理観がほぼ無いという点でしょうか。

主人公たるみずきちゃんからして「町の破壊」を目論む宇宙人。大好きでついて回るまるに対しても、蹴ったり突き飛ばしたり溺死させたりと、その扱いは非常にぞんざい極まりないものです。

で、そうした行動が例えば「Sっ気が強いから」とか、そういう理由で行われているわけではないというのが、大きなポイント。まるのみならず、周囲に対して行われる暴力的な振る舞いは、何かしらの思いがあってやっているというよりは、「単にジャマだから」とか「流れで」とか「なんとなく」という要素しかない。

基本的にみずきちゃんにあるのは「ポコドンを大きくするため」という目的だけであり、基本的にそれ以外はクソどうでも良いというスタンス。一本線で書かれた目に穏やかな笑顔が浮かぶことはあれど、やっていることや考え方はネジが完全にハズレている、というのがみずきちゃんなんですね。

怪獣が出るのであれば、そいつを倒す防衛隊が出てくるのはこの作品でもやはりお約束ですが、みずきちゃんと対になるキャラクターである(そして今後明確に敵対するであろう)、防衛隊の副隊長もたいがいな人物。
怪獣に対して生身で挑むことができる人間リーサルウェポンでありながら、怪獣を倒したくて倒したくて仕方なく、果ては巨大生物を倒すことで性的な快感を得るような性格。まぁ普通に考えればイカれた人格をしています。

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湿度の高い描写と、倫理観の無い(しかもアクの強い)キャラクター。これが合わさった結果、不穏な空気がビシバシ漂う作品となっております。
基本的にはとってもキュート。エグい描写に目をつぶれば、どのキャラクターの行動も、ズレたユーモラスを醸し出している。

とはいえ。
ドロドロとした、分けの分からない生き物が果たして何をもたらすのか(結果的には町の破壊なんだろうけど)、その考えが分からない。
倫理観の無い、次に何をしでかすか分からないキャラクターは、やはり何をもたらすのか(結果的には町の破壊なんだろうけど)、その行動が見えない。

無論、みずきちゃんにはまるという、副隊長には他の防衛隊員というツッコミ役がいます。いるんだけれども、結局彼らのツッコミが全て無と化すインパクトを持つのがみずきちゃんと副隊長。
彼らの「目的」は分かるけれども、その目的を達成するための「手段」がまったく予期できないという恐怖。予期でもロクでもなさそうという不穏さ。そんな「どうにもならん感」がとても魅力的。

ラストにでてきたまるに似た怪生物。そして海の中でますます大きくなるポコドン。
不穏な予感をビシバシさせつつ、2巻が楽しみな作品です。