踵を踊らせて

コンマ打つときにコツがいるのよ

カチュカサウンズ(スカート)『COMITIA 99-106 Cyanotypes and Galley Proofs』(COMITIA120_20170506)

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 今をときめくポップバンド・スカート澤部渡氏がサークル「カチュカサウンズ」として頒布していた、多重録音で作り上げた音源をまとめたアルバム。タイトルの通り、コミティア99から106まで『COMITIA』のタイトルで頒布していた音源を収録しています。
 ディスコグラフィ的には、1st『エス・オー・エス』、2nd『ストーリー』をリリースした後。インディーズで活動していた時期から、カクバリズムに参加する辺りまで。後にインディーズ期の3rdアルバム『ひみつ』や、4thアルバム『サイダーの庭』といったアルバムに収録された楽曲の原型が収められています。

 「夜のめじるし」「セブンスター」「おばけのピアノ」あたりの荒々しくローファイなタッチは改めて聞くとグッとくるし、「点線」「都市の呪文」といったライブでお馴染みの楽曲についても、楽曲としてのファンキーさは既にこの時点で完成されていたことが分かります。

 個人的には「三月」「真夜中」なんて現在のレパートリーに入っていてもおかしくない楽曲だと思いますが、どうでしょうか。「海の背中」はオートチューンが良い味出してて好きですね。基本的に2分~3分の楽曲で構成されているのもらしいというか。当時から一貫してポップミュージックの美学を貫いていることが分かります。


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 当時のことを語ったライナー及びティアズマガジン120のインタビュー(リンク)曰く、「プロとしてやれるかまだ不安定だった時期、とにかく曲を書くことを自らに課したのもコミティアという場所でした」とのこと。年4回のイベント毎に曲を書き、それをリアルタイムで発信し続けた数年間。あたかもイベント毎に毎回新刊を出すように、新録音源をリリースしていた時期。

 約2,3年間という決して長くはない期間ですが、その場所としてコミティアを選んだというのが、他人事なんですが凄く貴重で嬉しいものに感じられるのですよね。どの立場から物を言ってるんだという感じですが…。

 当時、ジャンルE(その他)の誕生席に配置されていて、澤部さんが気さくに色んな人とやり取りしていた姿を思い出します。個人的にはTシャツを買おうとした時におつりの小銭を引っ繰り返して、わたわたしていた姿が個人的に印象深いです。


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 スカートはコミティア120(17年05月06日)の後、17年10月18日ポニーキャニオンでメジャーデビューを果たしています。ある意味ギリギリのタイミングでのリリース。ちなみにメジャー2ndシングル「君がいるなら」には、『COMITIA106』に収録された、そしてこのアルバムの最後の曲である「すみか」が再レコーディングされています。*1 

 直近(2020年)では箱根駅伝のCMに「駆ける」が、ドラマ『絶メシロード』の主題歌に「標識の影・鉄塔の影」が起用されるなど、いい感じにメジャーシーンで活躍されています。コミティアにサークルとして出られる日はしばらくまだまだ無さそうですが、それでもまたあの会場で見たいなーと思う気持ちもあります。


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 アルバムは現在はライブの物販等でのみ手に入れられることが出来る模様。現在はライブ自体も出来ない歯がゆい状態ではありますが、早くステージで水色のリッケンバッカーをかき鳴らす姿を見に行きたいですね。

*1:時系列的にはその後3rdアルバム『サイダーの庭』に収録