アイマス界隈にとって 超絶珍品 が入荷しました!!
— まんだらけ中野店DEEP館@アイマス担当、 (@NAKANO_DEEP) 2022年4月14日
なんと
アイドルマスター総合プロデューサー
坂上陽三氏の若き日の同人誌となります。
60ページ近い量の中に漫画やイラストと盛りだくさん
坂上氏のイラストを始めて見ましたが
結構上手いのですね。驚きです
販売等の詳細はお待ちください pic.twitter.com/vSoP7zWgBi
『アイドルマスター』シリーズ総合プロデューサー・坂上陽三氏(以下ガミP)が昔描いた同人誌がまんだらけに出品されたとのことで、Twitterで一部界隈がざわついていた今日この頃。
ガミPがかつてマンガを描いていた…ということは自身のインタビューなどで散発的に言及される機会もありましたが、実際にサークル活動されていた当時、その同人誌に言及があった例を見つけたので紹介を1つ。
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2冊イラスト集が続いたが、次はFALCONの出した「CONTACT3」。まずはカリカリとした線でパロディックに、ダイナミックに展開される、碑水弾のSF「VIVA!! ヒーロー1」。荒いところはあるが、女の子はかわいいし、動きもいい。そのうえ、ギャグセンスが面白い。あるいは、「アニメ系サークルが暴動起こしたぞー」とバイクアクションで少女が暴れまわる坂上陽三(強調は引用者)の「インターセプターCM」。そして巻末は、独特のベタの使い方と、かなりしっかりしたタッチ、構成で読ませる夢野れいの「トラブル転校生」。
全体的にレベルが高く、みなセンスがある。メカ、女の子、アクションと、流行はみんな入ってる上、全員ストーリーを描いているところがうれしい同人誌だ。
(阿島俊『漫画同人誌エトセトラ '82-'98』67Pより)
出典は阿島俊氏による『漫画同人誌エトセトラ '82~'98』。阿島俊は2006年までコミックマーケット準備会前代表を務めた米沢嘉博氏のペンネーム。成人向けマンガ誌『レモンピープル』に1982年から1998年の廃刊まで毎月同人誌評を書いており、当書籍は連載を1冊にまとめたもの。その中で上記のようにガミPが参加した同人誌が紹介されています。
記事が掲載されたのは1984年5月号。「メカとアクション姉ちゃん」というサブタイトルで、恐らく直近で読んだ本の中から、SF作品に絞って紹介をした回。同人誌の発行時期、阿島氏が手に入れたタイミングは、1983年12月開催のコミックマーケット25あたりかと思われます*1。
上記で名前が出ている夢野れい氏は、現在もマンガ家として活動しつつ神戸芸術工科大学で教鞭を取られています。また、後述のガミPの著作を当時の感想と共にご自身のツイッターで紹介しています。
「主人公思考」
— 夢野れい@4月17日、大阪ワークショップ (@yumenoley) 2021年11月24日
坂上陽三著
KADOKAWA
昔、同人誌作ったり遊んだ友人と同じ名前だな〜と思ったら本人だった。
大したもんだねー pic.twitter.com/ddJ05FL5zE
夢野氏もガミPも大阪芸術大学の卒業生。最初に記事を読んだ際は、大学時代にサークル活動をしていたのかと思っていました。しかし、ガミPは1967年生まれで本の発行が1983年。計算すると16歳の時に描かれた作品だということに…! 高1か高2の頃にこれだけの作品を描いて完成させたのかと考えるとちょっとビックリ。
サークル「FALCON」自体が高校生の部活やサークルが母体なのかな…? と思っていましたが、どうもマンガ家を目指していた高校時代に、アニメスタジオでアルバイトをしていたとのこと*2。もしかしたら、その辺りでの人間関係の繋がりがあった可能性もありますね。
ガミPの著書『主人公思考』でも過去のことは断片的に言及されており、ハリウッドSF映画のようなハードな世界観を描きたいのに、可愛らしい絵しか描けなかったギャップ*3を語っています。まんだらけツイートや『エトセトラ』の紹介を見ても、SF×美少女の作風であることがビシバシ伝わってきます。「アニメ系サークル」なんて台詞が出るなら同人誌即売会を舞台にした作品とも思えますが、確かに高校生で描くにしては早熟なネタ。阿島氏の記事のみならず、周囲の感想も決して悪くなかったとはいえ、本人としては理想と現実のギャップが強かったのでしょう。
大阪芸大進学時にはマンガ家は断念、映画監督を目標に定めたそうですが、とはいえなにかのキッカケやインパクトがあれば、マンガを描く道に進む可能性もあったのでは…とも思います。ガミPがアイマスシリーズに参画したのは家庭用ゲーム機版の企画開始段階ですが、そもそもナムコ(当時)に入社しなかった場合、アイマスシリーズ今現在とはまったく違った形になっていたのかもしれません。
ちなみに10代のガミPがマンガを描いていた当時の大阪芸大は、庵野秀明、山賀博之、赤井孝美などなど、後のGAINAXの中核を担うメンバーがSF大会のために作成したアニメ(『DAICON III OPENING ANIMATION』)を皮切りに、自主制作アニメ・特撮作品で度肝を抜いていた時代。83年時点で庵野たちは大学を中退・上京していたので接点はほぼなかったでしょうが、関西圏出身かつアニメスタジオに出入りしていたことを考えると、名前と言わず姿を目にする機会もあったのでは。映画監督志望であったガミPは彼らをどのように見ていたのか…という妄想も膨らみますね。
庵野監督のシン・エヴァ制作を追ったドキュメンタリー『プロフェッショナル』は色んな意味で物凄い話でしたが、ガミPの『主人公思考』はざっくり言うと真逆のスタンスにある話かも知れません。会社員(というか組織人)であることをアイデンティティに置いた仕事論。組織の中でプレイヤーとして働くには、管理職・マネジメント層の立場としてどう動くのかという内容を軸に置いており、社会の片隅とはいえ、労働を何年もしているからこそスッと伝わるな…という感想。10代の頃からバリバリマンガを描いていた人が、いやでも会社員ってそんなに悪くないよ…と言ってるのは単純に面白い。マンガは1人で完結出来てしまうが故に孤独を感じていたが、色んな人と出会える会社員はベストな環境*4とも語っています。ガミPの若き日の仕事遍歴から、近年生放送に出るたびに心配されていた激ヤセの真相まで色々書かれてるのでおススメ。私もちゃんと腰を据えて読みます。